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「親が死んでも食休み」とは、例え親が死んでも食事の後は休みなさいという意味ですから、ちょっと過激なことわざですよね。大切な親の死よりも食後の休息が大切だと敢えて強調する真意は、食後の休みが消化吸収、ひいては健康に欠かせないという故です。
消化とは、「食べたものが胃や腸などの消化器官で、栄養分として体内で吸収されやすい形に分解されること」。私たちは健康維持のため、必要な栄養を含んだ物を食べますが、食べたものがそのまま栄養になる訳ではありません。食べたものは口→食道→胃→小腸→大腸という各消化器官を通過する間に、酵素などによって消化吸収され、必要な栄養分と滓(かす)に分類されていきます。栄養分は血液を通して体内の隅々まで運ばれ、滓は肛門から排泄されるという消化吸収メカニズムにより、健康を維持しています。
消化吸収は食べた直後からスタート。その時、体中の血液は最優先で消化器官に集まり、各消化器官がフル稼働できるよう、バックアップに働きます。一方、消化器官に回されたため血液が十分に行き届かなくなっている脳や筋肉の状態はどうなるかというと、頭はボオッ~として動作はノロノロ…。食後に起こるこの状態、経験おありですよね。
これが正常なのです。健康を維持するには、消化器官に血液を送ってフル稼働させ、消化吸収させて食べ物を栄養成分に変えることが最優先。何故ならこの栄養成分が丈夫な臓器を作り、免疫力を高め、細胞再生に働くからです。
ところが、食後に動くと消化吸収がスムーズに行われません。これは身に危険を感じた時、動物の体は消化よりも筋肉を使う(動く)ことを最優先するという危機管理メカニズムを備えているからです。消化が大切だと分かっていても、体は何はさておき血液を筋肉に送り、体の活動を優先させます。結果、消化器官の働きは鈍くなり、不十分な消化から消化不良が起こって吸収力が落ち、免疫力や細胞再生にマイナスの影響を与えていくのです。健康を維持するためには、食後はできるだけ動かないこと。十分な血液を消化器官に送り、消化と吸収がスムーズに行われる状況を作ることが大切なのです。
食休みの目安は20~30分。仮眠もいいですね。ただ、消化する前に長時間寝てしまうと、吸収されたエネルギーが消費されずに体脂肪となって蓄積され、肥満の原因になるので要注意。特に基礎代謝が落ちてくる30代以降は気をつけましょう。

                             沢木みずほ(『週刊金曜日』連載より)