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理由はヒトの消化酵素では消化されないグルコマンナン

体の砂払いの「砂」とは「老廃物」のこと。だから「体の砂払い」は「体内の老廃物を排出する」という意味です。こんにゃくは成分の約97%が水分で栄養価はゼロに等しい食べ物。にもかかわらず、ことわざに登場した理由は体内の老廃物を排出する働きを持っているからです。老廃物排出は、動物が健康を維持していく上で欠かせない生理メカニズム。そんな重要な働きをこんにゃくが持っていることを、遥か昔から人々は暮らしの中で知っていたのです。
昨今、特に若い女性にとってのこんにゃくはダイエット食品ですが、昔の子どもたちにとっては体内を浄化する食べ物でした。小さい時からこのことわざを聞かされ、特に男の子は「睾丸(こうがん)の砂を取り除く」という理由で、定期的にこんにゃくを食べさせられました。「こんにゃくは男の砂払い」などということわざもあったほど。でも実はこれ、全くの俗信ですから。
こんにゃくの老廃物排出機能は、グルコマンナンという食物繊維によるものです。グルコマンナンはヒトの消化酵素では消化されない水溶性の食物繊維。消化されない状態で腸に届くため、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、腸内の便をやわらかくし、腸内に残っている老廃物を絡め取って排泄します。だから便秘解消に抜群の効果を発揮するのです。さらにコレステロール値や血糖値を抑える働きを持っているため生活習慣病の予防にも有効。また昨今の研究で、セラミドという皮膚の角質層に存在する脂質が豊富に含まれていることが判明しました。セラミドは「角質層のバリア機能と角質層に存在する水分を守る」という肌の乾燥予防に重要な働きをする成分。こんにゃくは砂払いだけでなく、乾燥肌も予防してくれる優れものなのです。
こんにゃくは仏教伝来とともに日本に伝わったと言われています。初めは薬用として、後には長く禅寺の精進料理として利用され、広く庶民に食べられるようになったのは江戸時代後期。末期には『蒟蒻百(こんにゃくひゃく)珍(ちん)』という料理本が登場するほど、こんにゃくは整腸作用の高い食べ物として人々の食生活に根をおろしました。
蒟蒻百珍からレシピをひとつご紹介しましょう。レシピ名は「いりだく」。うすく切ったこんにゃくを、ごま油を敷いた薄鍋に入れて、ジャッジャッと音を立てて炒め、水分が飛んだらOK。大根おろしやわさび醤油しょうゆでどうぞ。ヘルシーで、メタボリックが気になる方に特にお勧めです。

                            沢木みずほ(『週刊金曜日』連載より)