鶏卵(けいらん)

一番多く流通している卵で、価格の安定した食材です。卵殻の白色が主流で、色のついた有色卵には褐色の赤玉、薄赤玉があり、珍しいものでは、南米チリ産のアローカナ種という鶏が産む青い卵があります。平安時代には縁起が悪いと遠ざけられていた卵ですが、江戸時代にはすっかり定着し、料理集『卵百珍』も出版され、江戸の町には卵売りも登場しています。一年中安定した価格で市場に出回る卵ですが、旬は「春」。春の若鶏の産む卵が一番おいしいといわれ、青々とした草を食べて産み落とされた卵は「草卵(くさたまご)」と呼ばれています。

●卵の白身と黄身

卵白:濃厚卵白と水様卵白、カラザから成立ち、古くなるに従って水様卵白が増加していく。卵白たんぱくには細菌の増殖を防ぐ成分があり、卵を腐敗から守っている。
卵黄:卵黄膜で包まれた中に円状に位置し、中央の表面には胚盤がある。卵の脂質のほとんどが卵黄に含まれており、カルシウム、鉄、ビタミン類などが豊富に含まれている

成分

たんぱく質、脂質を豊富に含んでいる。リン、カルシウム、鉄分などのミネラル類、ビタミンA、B1、B2、B12、Dなどのビタミン類も多く含んでいる。黄身にはリン脂質のコリンが、白身にはリゾチームが含まれている。

効能

良質なたんぱく質には必須アミノ酸がすべて含まれており、グルタチオンをつくるアミノ酸が多く、肝臓強化に効果が高い。栄養素がバランスよく含まれているので、体力を強化し免疫力を高める。コリンは神経伝達物質「アセチルコリン」の原料となりアルツハイマーの治療や物忘れ防止に期待されている。リゾチームは炎症を鎮める働きがある。

効果的な調理のポイント

  • 栄養価の高い卵だが、唯一含有していない栄養素がビタミンCと食物センイ。卵料理の時にこの2つの栄養素をプラスすると完全食になる。
  • パックに表示されている賞味期限は生食の期限なので、賞味期限の過ぎた卵は、加熱して早めに食べるとよい。ひび割れしている卵の生食は控えた方がよい。
  • 生食の場合は、食べる直前に割る。
  • 使用する直前に割るようにする。割ったままにしておくと細菌が増殖しやすくなるので注意する。

保存時の注意

  • 「卵は丸い部分を上にして保存する」卵の丸い側には気室(空気が入っている場所)があり、この気室を上にすると卵黄を安定した状態で保て、鮮度を維持することができる。
  • 「傍に臭いの強い物を置かない」卵殻には気孔と呼ばれる穴が無数に開いている。この穴から内部の水分や炭酸ガスを発散し、同時に外の臭いを吸収している。強い臭いを吸収すると卵に臭いがついてしまうので要注意。

レシピ
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卵とトマトのスープ
滋養に優れ、免疫力を高める
所要時間:10分
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鶏卵のたんぱく質はすべての必須アミノ酸を含んだ組成をしており、特にメチオニンを多く含んでいます。トマトのリコピンを加えると、滋養に優れた免疫力の高い食べ合わせになります。トマトの酸味のクエン酸やリンゴ酸が疲労物質を取り除き、卵黄に含まれるレシチンと一緒に脳の働きを高めます。

●材料(2人分)
卵(M)……1個
トマト缶(ホール)……80g
鶏ガラスープ……2カップ
A 酒……大さじ1/2
  塩、こしょう……各適量
白髪ねぎ……適量

●作り方

① ホールトマトは一口大の薄切りにする。
② 卵はよく割りほぐす。
③ 鍋にスープを煮立て、トマトを加えてひと煮立ちさせ、Aで味を調える。
④ ③を弱火にし、③の卵を回し入れる。
⑤ 器に盛り、白髪ねぎを飾る。