縄文中期に渡来し、万葉以前から栽培され食されていた野菜で、原産地はインド付近スリランカといわれています。里で栽培されるのでさといもと呼ばれ、じゃがいもやさつまいもが出まわる以前は、「いも」といえばさといもを指していました。親いもに子いもがつき、子いもに孫いもが付くことから子孫繁栄の印とされ、縁起のよい食べ物とされています。
成分
糖質が12~18%で、糖質のほとんどがデンプン。カリウムや食物繊維が多く、ビタミンC、B1、B2も含有している。独特のネバリは食物繊維の一種のガラクタンやムチンで、えぐ味はホモゲンチジン酸とシュウ酸カルシウム。
効能
ヌメリのガラクタンは血圧を下げ、血中コレステロールを取り除き、脳細胞を活性化する働きを持っている。ムチンは肝機能を強化し、胃や腸壁の潰瘍予防に効果がある。カリウムが体内の塩分を調整するので高血圧に有効に働く。食物繊維がコレステロールの正常化に働くので、便秘や肥満の解消にも効果が期待できる。
効果的な調理のポイント
- ヌメリには薬効成分が含まれているので、あまり落とさないようにする。手がかゆくなる時は手に塩か重曹をつけると防ぐことができる。調理の前に酢水に手をつけるとかゆくならない。また石けんで洗うとかゆみが治る。
- 煮る時は吹きこぼれに注意する。
- 南国産なので保存は常温で。泥付きで購入する方が栄養分の損失が少ない。
レシピ
さといものおはぎ
疲れを取り去り体調を整える、先人の知恵が生んだ日本の和菓子
所要時間:15~20分(ごはんを炊く時間は除く)
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中秋の名月(現在は9月の十五夜)には、ちょうど収穫盛りであったさといもを供えるのが風習でした。糖質が豊富なさといもを加えたおはぎは、小豆のビタミンB1の働きで糖質がエネルギーに変えられるため、疲労回復や筋肉痛、肩こりに有効です。食物センイも豊富なので便秘解消にも優れた一品です。
●材料(10~12個分)
さといも(大) 2個
米 1カップ
小豆あん、きな粉 各適量
●作り方
① 米は研いで、普通の水加減にする。
② さといもは皮をむき、3~4等分に切り、①に入れて炊く。
③ 炊き上がったらすりこ木などでつぶし、10個の俵型に丸め、小豆あんで包んだり、きな粉をまぶす。
※ きな粉のおはぎは芯に小豆あんを入れてもおいしい。その場合のごはんは少なめにするとよい。
<失敗しないおはぎの握り方>
A.濡らしてかたく絞った布巾の中央に小豆あんを乗せて楕円に伸ばす。
B.小豆あんの上に俵型に丸めたごはんを乗せ、布巾の端を持ち上げて小豆あんでごはん
を包み込んでいく。
C.布巾ですっぽり包み込み、下側で軽く絞るように俵形に形を整える。
D.表面に指の跡が残らないようにし、布巾をはずす。
●ここが知りたい!
「おはぎとぼたもちの違い」
ともに春と秋のお彼岸につくる和菓子で、基本的には同じものです。一般に春は牡丹の花に例え「ぼたもち」と呼び、秋は萩の花に例え「おはぎ」と呼ばれています。ぼたもちは牡丹の花のように大きくあでやかにつくられ、おはぎは萩の花のように小ぶりにつくられるのが一般的です。おはぎは萩の花に似せて小豆の粒を散らしたことから、粒あんでつくられます。