縄文時代から食されていたと推測されるやまのいもは、米よりも古い歴史を持っています。里で栽培されるさといもに対し、山野で自生することからこの名がつけられ、現在では自然種と栽培種に分けられています。いもの中では唯一生食できるのが特徴で、どんなに食べ続けても害はなく、精のつくことから、別名「山うなぎ」とも呼ばれています。
成分
主成分はでんぷん。でんぷん分解酵素のアミラーゼを多く含有している。粘質物はグロブリン様のたんぱく質にマンナンが結合したもの。ヌメリはムチン。コリン、サポニン、カタラーゼも含有されている。
効能
アミラーゼが消化を促すので、食べ続けても害がなく、虚弱体質や病後の回復に効果がある。ムチンはたんぱく質の吸収を促進するので、一緒に食べたものの消化吸収がよくなり滋養強壮の効果が期待できる。コリンは新陳代謝を促し、サポニンは抗酸化作用があり、カタラーゼは活性酸素を解毒する。ネバリ成分のひとつであるデオスコランには過剰な血糖を下げて正常に戻す働きがある。
効果的な調理のポイント
- 加熱すると酵素の働きが弱まるので、薬効を得るなら生食がよい。
- 酵素の効果は細胞を細かくする方が効果的なので、すりおろすとよい。
- アクが強く変色しやすいので、皮をむいたら酢水につけると変色を防げる。
- 切ったやまのいもが変色しても食用には問題はない。色が気になるようだったら揚げ物や汁物にするとよい。
- やまのいもの芽はじゃがいもと違って害がないので、芽を取れば食用としてさしつかえない。芽はいもの中の栄養成分を吸収してしまうので、小さい時に取り除くとよい。
- 調理時に手がかゆくなるのは皮付近に在るシュウ酸カルシウムの針状の結晶が壊されてバラバラになり、手や口などにささるため。酸に弱いので、あらかじめ酢水につけておくとよい。かゆみが起こった時は、レモン汁や食酢を薄めたもので軽く洗い流すとよい。
レシピ
じょうよ蒸し
消化吸収に優れた大和いもと白身魚が、体力低下を食い止める
所要時間:25~30分
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白身魚は良質なたんぱく質を含有し脂肪が少ないので、胃腸が弱く、体力の落ちている時に向く食材です。大和いもも同様に消化吸収に優れているので、虚弱体質や病後に有効な食材です。大和いものヌメリのムチンはたんぱく質の吸収を促進し、加熱調理すると下痢に効くといわれています。
●材料(1人分)
大和いも 50g
白身の魚(切り身) 2切れ
A 酒 大さじ1/2
塩 少々
B 卵白 1個分
塩 ひとつまみ
みりん 小さじ1
C だし汁 1カップ
塩 ひとつまみ
みりん 小さじ1/2
薄口しょうゆ 小さじ1
片栗粉 小さじ1
●作り方
① 白身魚は食べやすい大きさに切り、Aを振っておく。
② 大和いもは皮をむき、酢水に漬けてアクを抜く。水気をよくきり、すり鉢の内側ですりおろしてからすりこ木でさらになめらかになるようにする。
③ ②にBを加えて、さらによくする。
④ 器に魚を乗せ、上から③をかける。
⑤ 蒸気の上がった蒸し器に④を入れ、フタの下によく絞った布巾をはさみ、中火で12~13分蒸す。
⑥ 鍋にCを入れて火にかけ、アンをつくる。
⑦ 蒸し上がった⑤に⑥をかけ、わさびを飾る。